2025年1月22日、幕張メッセにて、「ドローンショー業界の今と未来」が分かる1日目のトークセッションが開催されました。
このイベントは、第12回ライブ・エンターテイメントEXPOに株式会社ドローンショー・ジャパンが出展し、行われたトークセッションで、同日夜にはイオンモール幕張新都心にて、500機のドローンによるドローンショーが開催されています。
このイベントでは、『ドローンショーと地方創生』をテーマにトークセッションが行われました。
そこで本記事では、「ドローンショーと地方創生」をテーマに、一般社団法人 熱海市観光協会理事ブランディングアドバイザー中尾潤氏と、株式会社ドローンショー・ジャパン代表取締役の山本氏の対談をまとめています。
一般社団法人 熱海市観光協会ブランディングアドバイザー中尾潤氏とは?
一般社団法人 熱海市観光協会理事ブランディングアドバイザーの中尾潤氏は、1981年に電通に入社し、自動車、食品、飲料のアカウント・エグゼクティブを務めました。
その後、電通総研研究企画室長を経て、2010年からは財務省大臣官房企画官として出向しています。
2012年に電通に戻り、電通総研所長も務めました。
マーケティング戦略、ブランド戦略、戦略広報、地方創生を専門分野としており、2022年9月から熱海市観光協会理事として熱海市ブランディングアドバイザーに就任しています。
中尾潤氏とドローンショー・ジャパンとの出会い

中尾潤氏とドローンショー・ジャパンとの出会いは、2022年に熱海市の花火大会にドローンショーを提供したことからでした。
その時のことについて、山本氏は次のようにコメントしています。
「ドローンショーを提供した際に打ち上げがあって、そこで熱海市観光協会から中尾さんを紹介されました。
その時にお話を聞いて、電通のバブル期に時代を切り開いていった方で、観光業や地方創生にいろいろ尽力されている方だと知りました。
いつもは飲み屋で話しているのでこうしてトークセッションという形で仕事の話をするのは初めてです。」
今後は、中尾氏とドローンショー・ジャパンそして熱海市で開催されるドローンショー×花火のコラボレーションイベントが期待されます。
熱海市の観光面での地方創生について
中尾氏がアドバイザーに就任した2022年ごろにはV字回復の兆しを見せていた熱海市ですが、最近では完全復活したと言われています。
どのように熱海が観光地として復活したのか、ここから説明していきます。
熱海市の観光面で元々あった課題や取り組み
熱海市の観光面で元々あった課題や取り組みについて、中尾氏が解説した3点を紹介していきます。
①地元活動家による熱海市民のインナーブランディング
東京から熱海に戻ってきた地元の若手活動家が、市民の意識改革を行いました。
まず観光客にヒアリングすると、「熱海のタクシー運転手やホテルのフロントに、熱海の観光スポットを聞いてもわからないと言われる」という問題があることがわかりました。
これはなぜかというと、昔熱海は団体旅行で来る人が多かったため、宴会をして二次会でスナックに行くというのが定番コースでした。
そのため、熱海は銀座のようにスナックが多く、観光地に案内することが少なかったということです。
そこで、観光客と地元の人たちが一緒に観光スポットを巡るイベントを開催したところ、地元の人の意識が変わり、おもてなしの精神が芽生えるようになってきました。
②熱海市役所によるロケ地支援サービスでメディア露出増
テレビというメディアが斜陽になり、売り手市場から買い手市場に変化したことで、番組制作費が削られることが多くなってきました。
そこで、熱海市役所が自ら、ロケ地のコーディネーションや許可申請手続きを全て請け負うサービスを始めました。
これによって、グルメ番組や旅行番組で、熱海の露出が大幅に増加しました。
③東京から日帰り花火大会の通年化、若年層の取り込み
もともとの利点であった東京からのアクセスの良さにプラスして、花火大会を前面に打ち出しました。
夏の風物詩である花火大会を通年行うことで、夜のエンターテイメントを積極的にアピールしました。
熱海市が抱える今後の課題
熱海市が抱える今後の課題について、中尾氏が解説した3点を紹介していきます。
①花火大会の日とそうでない日の観光客数の偏りが大きい
花火大会のある日はホテルや旅館が満席で料金も高くなりますが、それ以外の日はまだ空室があったり、ホテルの値段が安くなるのが課題となっています。
②ナイト・エンターテイメントの充実
日中は若者の日帰り観光客が多く、グルメやスイーツの食べ歩きを楽しんでいますが、午後3時をすぎるとだんだん人が少なくなっていきます。
それに伴い、飲食店も夜は営業しない店が多くなってしまうので、夕方から夜にかけてどのように人を残すかが課題です。
③インバウンド対策の着手が遅れている
もともと熱海は国内からの観光客が多く、コロナ禍でもインバウンド観光客の影響が少なかったというプラスの面がありますが、そのためインバウンド観光客の取り込みについては着手が遅れています。
国内の観光客と海外からの観光客のバランスを上手く取ることが重要です。
世の中の変化に伴う熱海市の課題
世の中の変化に伴う熱海市の課題について、中尾氏が解説した3点を紹介していきます。
①人手不足
コロナで世の中が変化し、お店を廃業したり今までやってきた仕事を辞める人が増え、サービス業が人手不足になっています。
熱海でいうと、バスの運転手が少なくなってしまったため、便を減らすなどの対策が取られました。
人員不足解消のために、高品質な寮を作って従業員確保に成功した旅館もあるとのことです。
②円安でインバウンドは増加しダイナミックプライスになるが国内客は不満が増す
急激な円安によってインバウンド客にとってはメリットが大きくなりますが、日本国内の観光客にとっては高く感じるようになり、3泊の予定を2泊に減らしたり、近距離に変更したりということが増えています。
③地震や気象災害の激甚化による観光客のキャンセルや風評被害
2024年に起きた能登半島地震や、南海トラフの地震、夏の猛暑などによって、観光業は影響を受けやすいため、どう対応していくかが求められます。
地方創生の成功への道
地方創生の成功への道について、中尾氏は次のようにコメントしています。
「行きたい街、泊まりたい街、住みたい街の3つをバランスよくやっていくことが重要と考えています。
現状は『行きたい街』として熱海に来る人が多いですが、それだけだとオーバーツーリズム(観光地に観光客が過度に集中することで地域社会や環境に悪影響を及ぼす現象)になってしまいます。
それだと飲食業の需要は増えますが、旅館などに泊まってもらわないと宿泊業の需要は増えません。
『泊まりたい街』にするためには、夜のエンターテイメントを充実させて、飲食店を夜も営業しなければならないので、ナイトタイムエコノミーをどのように活性化させるかが課題です。
そして、住んでいる人が熱海は素晴らしい街だと言えるような街にしていくと、住みたい人が増え、働く人が増えていきます。
このWIN-WIN-WINの関係をどう作っていくかということが重要です。
ファーストステップである熱海は成功したので、2番目3番目の街をどう作っていくかが、私の仕事だと感じています。」
今後は、ナイトタイムエコノミーが観光・街づくり・文化の面からも重要になるため、ドローンショーは現状の施策にマッチしていると言えます。
インバウンドが期待するもの
インバウンド観光客が期待するものについて、中尾氏が解説した3点を紹介していきます。
①VISUAL(見たい景色を見に来る)
日本国内に在住している人は、熱海と箱根がどう違うかよく知っていますが、インバウンドの人にとっては違いがあまりわからないため、最初の興味を惹く入り口はビジュアルになると思います。
そこで、SNSやYouTubeで見た景色を見に行きたいというのがきっかけになっていきます。
②EXPERIENCE(リアルな体験をしに来る)
景色を見て、写真を撮って終わりではなくて、どんな体験をできたかが重要です。
自分で体験できた文化がないと、人に推奨したり、もう一度行きたいという気持ちが出てきません。
③STORY(素敵な思い出を作りに来る)
体験したことによって思い出が作られます。
最初のビジュアルは一度行ってみたいというきっかけになりますが、そのあとは体験と物語を結び付けていくことが重要になっていくと考えています。
観光地経営に必要なもの
観光地経営に必要なものについて、中尾氏が解説した3点を紹介していきます。
①平準化(集中化ではなく平準化が鍵)
花火大会などのイベントがある日だけ人が集まるのではなくて、まんべんなく集まるようにすることが平準化です。
②高付加価値化(価格帯を見直すきっかけにする)
価格をどの程度まで上げられるかを検討することも重要ですが、上げすぎると国内の人にとっては行きづらい街になってしまいます。
価格帯を見直し、どのようにその価値に見合ったものを作っていくかが重要です。
③効率化・DX化(人がやってきた仕事を置き換える)
今まで人がやってきたものをどうデジタル化していくかも考える必要があります。
さまざまな補助金が出ているので、観光地側が経営としてうまく活用し、インバウンド需要から地域に繋げていくことが重要になります。
地方創生におけるドローンショーの事例
地方創生におけるドローンショーの事例として、山本氏は次のようにコメントしました。
「世界遺産である姫路城のライトアップイベントとコラボして、ドローンショーを開催しました。
2024年が2回目の開催でしたが、初回から1万人以上が姫路城に集まり、大変な盛り上がりでした。
もう一つの事例として、和歌山城でも同様にドローンショーを開催しました。
ドローンショー・ジャパンのロゴを映したのですが、巨大なサイネージとしての利用も可能なことが分かります。
この時も和歌山城にこんなに人が集まったのは初めてだと言ってもらい、このドローンショーをきっかけに夜の街の再活性化に役立てていただければと思いました。」
過去にドローンショー・ジャパンは、姫路城のライトアップイベントでドローンショーを飛ばしており、多くの観光客の集客と高い広告効果を達成しています。

さらに、同社が開催した『富士急ハイランド開業60周年記念ドローンショー』では、ドローンショーを開催したことにより前年同時期の富士急ハイランドへの来場者数を140%上回る大成功を収めています。

ドローンショーがもたらす地域への経済効果
ドローンショーがもたらす地域への経済効果について、山本氏は次のようにコメントしました。
「姫路城のドローンショーの事例で言うと、姫音祭というお祭りが日中にあって、日帰りのお客様をどうやって宿泊してもらうかを考えたときに、ドローンショーをナイトコンテンツとして実施しました。
その日は姫路城を中心に、コインパーキングは満車で、宿泊施設は満室になりました。
そこに宿泊するということは当然飲食にも繋がるので、トータルの経済効果を加味すると、ドローンショーを実施する価値は大きくなると思います。」
山本氏は、日帰りの観客を「どのようにして滞在時間を上げるか」「宿泊してもらうか」を重視し、ドローンショーをナイトコンテンツとして実施したところすぐに効果が表れたとコメントしています。
また、ドローンショー観覧後に宿泊する観客が増えることで、コインパーキングや飲食店の売り上げにも影響するため、大幅な地域活性化が期待できます。
ドローンショーは地方創生の戦略として有効活用できる
ドローンショーは地方創生の戦略として有効活用できるかという点について、中尾氏は次のようにコメントしました。
「まず、ドローンショーを見に行きたいから夜までいようとなったときに、そうなると帰りが混雑するから宿泊しようという気持ちになります。
観光地側からすると、宿泊することによって集客が平準化していくといった流れです。
そして料金を高くするための付加価値としてもドローンショーが理由になります。
ドローンショーは、この入り口から第2のステップに持っていくのに有効なコンテンツだと感じます。」
ドローンショーは今後も、地方創生の戦略として有効活用されるというコメントが発表されました。
ドローンショーは『照明器具』という認識が必要
ドローンショーは『照明器具』という認識について、山本氏は次のようにコメントしました。
「ドローン自体はLEDライトを付けて飛ばしているだけなので、コンテンツ性があるわけではなく、ただの照明器具という考え方が必要だと思っています。
この照明器具をたくさん飛ばせるデバイスがあるので、何を目的として、どういうコンテンツを提供するかを開拓していかないといけません。」
次に、中尾氏は次のようにコメントしています。
「各地の観光地を比較して、どういう検索ワードがあるかを調べるのですが、そこで『光に人は集まる』ということがわかってきました。
それを受けて、熱海も花火だけではなくて、イルミネーションやドローンショーなどの光を上手く取り入れようという話をしているので、ドローンが照明器具というのは、その通りだと思いました。
熱海も通年で花火をやっているので、ドローンショーもコラボしたりして、年間を通して楽しめる地域にしていけたらと考えています。」
本トークセッションでは、照明器具として認識するLEDドローンを「どういうコンテンツで提供するか」開拓することが重要だと語られました。
ドローンショーの提供料金について
ドローンショーの提供料金について、山本氏は次のようにコメントしました。
「ドローンショーの提供料金に関しては、定価の30%から40%くらいは機材の利用料金です。
私たちは開発から製造まで行っているので、製造元から利用料を見積もっていますが、もし年間10回やるということであれば機材を購入したほうがお得になります。
購入以外にも、1年間リースでレンタルできるプランもこれから提供していきたいと考えています。」
株式会社ドローンショー・ジャパンは、自社で機体を開発・製造・販売しているため、他のドローンショー会社よりも融通が利く価格設定と柔軟性を持ち合わせていることが分かります。
ドローンショーのエンターテインメント以外の観点、未来への展望
ドローンショーのエンターテインメント以外の観点や、未来への展望について、山本氏は次のようにコメントしました。
「ドローンは照明のデバイスなので、エンタメの演出の1つという考え方ではなくて、空中を大きなサイネージにするという使い方もできると思っています。
一例として、大阪のイベントで、会場の空に『危険・KEEP OUT』という文字をドローンで映したのですが、イベントが始まる前には監視船が出たり、海上警備が必要です。
そういう場合に、拡声器で告知するのではなく、空に文字を映して伝えるというやり方もできるのではなかと考えています。」
ドローンショーは、ショーイベント以外にも、夜空に文字を表現することで注意喚起も実現できます。
ドローンショーを平時と有事で使い分ける
平時と有事のドローンの使い分けについて、中尾氏は次のようにコメントしています。
「住んでいる人は避難場所がわかるかもしれませんが、観光客にはわかりません。
そこで熱海市にも、防災に強い観光地というイメージを作れるようにしようと提案しています。
現在熱海市では、市民のために防災食をストックしていますが、観光客用に旅館にもストックしておいて、ローリングストックで期間が過ぎたら花火大会で販売するというというのを考えています。
防災食は熱海ならではのスイーツにして、お腹を満たすだけではなく心を和ませるようなスイーツ缶ができたらと思っています。
そして、ドローンに関しては、有事の際のメッセージが機能するには、平時にメッセージがある場所を伝えていくことが必要です。
有事だけやっても意味がないので、平時と有事の両方でやるという考えを持ち、防災に強い観光地を作っていきたいと考えています。」
ドローンショーを平時と有事で使い分けることにより、地域活性化だけでなく、人命救助や避難案内の面でも役に立つことが分かっています。
今後はショーイベント以外にも、有事の際の避難経路表示など様々な使い方が実証実験されます。
ドローンショーでも有事に物を運べる?
ドローンを使って有事の時に物を運ぶことはできるのかという中尾氏からの質問に、山本氏は次のように答えました。
「やろうと思えばできます。
実現するために、自社製品の開発にこだわっているので、エンジニアをどんどん内製化しています。
平時にはエンタメとして楽しませるデバイスでも、有事の際には物を運んだり、カメラで探索出来たりというのは可能で、そこで必要になってくるのがドローンパイロットです。」
プログラミングされた複数機でアニメーションを夜空に映し出すドローンショーですが、有事の際にはカメラでの探索や物を運ぶなどの操作が必要になります。
そのためには、ドローン国家資格の取得が欠かせません。
これからドローンショーを担当する方や有事の際にドローンを使用する方は、ドローンスクールを受講し、国家資格を取得しましょう。
今後は自動操縦ができるドローンパイロットが必要
今後重要な自動操縦ができるドローンパイロットについて、山本氏は次のようにコメントしています。
「これから必要になってくるのは、自動操縦のパイロットで、ソフトウェア操縦に長けている人がその土地にいるかということが重要になってきます。
平時のときはドローンショーのパイロットとしてソフトウェア操縦できる人が常にその土地にいる、という状態を作っておくということが大事だと思います。
通常は1人1台のドローンを操縦しますが、自動操縦は1台のパソコンで何台も操縦できます。
あらかじめパソコンで飛行経路を設定して操縦するのですが、今後はこのやり方がスタンダードになってくると思います。」
今後は、ドローンショーをプログラミングし、自動操縦ができるドローンパイロットが重宝される時代が来るかもしれません。
まとめ:ドローンショーが人々にとって当たり前の存在となる社会が重要
ドローンショーが人々にとって当たり前の存在となる社会について山本氏は次のようにコメントしています。
「ドローンショーの事業を始めたときの最初の目的でもありますが、ドローンショーが一部の人しか見ることのできない珍しいものではなく、日本全国世界中で定着して、この場所に行けば毎晩ドローンショーが見られるというような定番化を目指していきたいと思っています。
そのためには価格を下げる必要があり、ドローンショーのパイロットも増やしていく必要があります。」
ドローンショーは、日本だけでも月平均10件以上のイベントが開催されており、多くの観客を集めデジタルマーケティング・空中QR広告など多くのマーケティング施策を成功させています。
しかし開催日が決まっているため、予定が合わずドローンショーを観に行けないという人も大勢います。
そこでドローンショー・ジャパン山本氏は、特定の場所に行けば毎日ドローンショーが見られる定番化を目指しています。
ドローンショーを全国各地、いつでも・どこでも見られる時代が今後到来するかもしれません。